『田中宏とまちを創る会』

平成27年9月 田中 宏 一般質問

1. 選挙権の18歳引き下げについて
 (1) 若年層の低い投票率を改善する方策について
 (2) 小中学生の政治参画意識を育む取り組みについて
2. 鶴岡シルクタウンプロジェクトについて
 (1) 文化面について
 (2) 産業面について
 (3) 観光面について


1. 選挙権の18歳引き下げについて

◆7番(田中宏議員) それでは、通告に従いまして、1問1答方式にて一般質問を行います。

 初めは、選挙権の18歳引き下げについてということで、きのう酒田市長選挙が投開票されまして、結果はさておきまして、投票率に着目しますと、59.57%であったということで、6割に満たなかったわけでございます。やはり10人のうち4人も参加していないという状況での選挙というのがどのぐらいの意味合いが損なわれるのかという、非常に心配されるものでありまして、やはりそれは他山の石とすべきであろうと思っております。

 さて、選挙権の18歳引き下げにつきましては、来年夏の参院選から導入見込みとも言われておりまして、高校3年生で選挙権を得るという子供も多数出てくるわけでございます。

 そこでまず1番目、若年層の低い投票率を改善する方策はということで、衆議院選挙に例えば着目いたしますと、90年代以来低落傾向が強いというふうに言われております。それで、特に昨年の衆議院選挙は過去最悪の、全体としては52.66%で、20歳代に至っては32.58%であったというふうに全国的な傾向が言われております。

 そこで1点目なんですけれども、期日前投票というのがございます。近年、期日前投票は増加の傾向にあると。全体としてはまだまだ少ないですけれども、増加の傾向にあるというふうに言われております。

 そこで、投票所にそもそも若手が行ったことがないわけですから、そこはやはり選挙というものはアウトリーチしていくというような視点で期日前投票所をいろんな場所に設けてみてはどうかという提案です。

 いろんな場所といいますのは、例えばことしの4月の統一選挙におきましては、全国的には9市で12大学で導入が図られまして、一定の成果を得たと思っております。

 そこで、鶴岡を鑑みますと、高校生でもちろん選挙権を得る子供もおりますので高校、それからあと大学というか、高等教育機関も鶴岡には集積しておりますので大学ですとか高専ですとか。それから、あと人が集まる場所、商業施設ですとか、あと学生が歩く駅ですとか、そういった18歳未満の子供たちの目にも触れるという点で、今すぐ選挙権は得ていない子供に対しても好影響を期待するところでございます。

 それで、期日前投票を行うにはさまざま装置といいましょうか、必要なものですから、そこは必ずしも全日程その場所に設けておかなくても、キャンペーン的に数日ずつ移動するようなキャラバンでもいいのではないかと思いますが、そのあたりの見解を伺います。

 そして2つ目、投票者に対して一定の何か特典といいましょうか、インセンティブを設けてはどうだろうかと。これは全国的にさまざま商店街単位ですとか取り組みがあると思うんですけれども、例えば鶴岡においては、近年市の主導する食文化の取り組みと一緒に鶴岡市内の飲食店が御協力いただくなんていう取り組みがとっても軌道に乗っておりますので、そういったルートを生かしまして、若者が政治に関心を持つ一つのきっかけづくりになれば、それから地元経済の活性化につながればということで、投票者が、投票済証というのが発行できるわけですけれども、投票済証を持参した人に対して何らかの特典を設けるというようなことは検討したらどうかという提案でございます。

 そして2番目、小・中学生の政治参画意識を育もうという点で、何しろ18歳で有権者、今では20歳で有権者ですけれども、そこの時点で、何しろ衆議院選においては32%の20歳代しか選挙に行かなかったわけですので、ここはやはり長期的な視点で、小・中学生のころから主権者としての意識を育てていくと。シチズンシップと言ってもいいかもしれません、進めていく必要があろうかと思います。

 そこで、選挙につきましては、本物の投票箱、記載台というのが割と多くの期間、倉庫の中で寝ているわけですので、学校で本物の投票箱ですとか記載台を使う機会というのを設けてはどうだろうか。例えば生徒会長の選挙ですとか、あるいは小学校レベルでは、全国的に給食のメニューなどの人気投票とか、そういうふうにしても親しまれているそうですけれども、学校で本物の投票箱や記載台を活用するというアイデアはいかがでしょうか。

 それから、この議場ですね。全国の自治体で子供議会というのは多数行われております。それで庄内でも事例があるわけですけれども、この議場を使って、やはり投票行動だけではなくて、もっと議会そのもの、あるいは政治というものに関心を持ってもらうということで、傍聴というのもありますけれども、なかなか人数の多い学校は傍聴に来られませんし、やっぱり実際傍聴するより自分が主体的にかかわるというのが有効ではないかと思うものですから、リーダー研修などの機会を利用してこの議場を活用した子供議会を開催してはいかがかというあたり、まず選挙権の18歳引き下げについて質問いたします。

◎選挙管理委員会委員長(青木博) 若年層の低い投票率を改善する方策について、2点の御質問にお答えいたします。

 まず、選挙権年齢の18歳引き下げを主とした公職選挙法の改正につきましては、去る6月17日に参議院本会議で成立し、6月19日に公布され、1年後の平成28年6月19日から施行されることとなります。

 それで、施行後初めて公示される国政選挙から適用されることになっておりますので、平成28年7月25日に任期満了を迎えます参議院議員通常選挙から実施される予定であります。

 選挙権年齢の18歳引き下げに伴い、18歳、19歳の方々が新たな有権者として加わることになり、全国で240万人、本市においては約2,500人ほどが選挙人名簿に登録される見込みであります。

 最近の投票率でありますが、昨年12月の衆議院議員総選挙の本市の投票率は61.61%、前回比2.88ポイントのマイナス。また、4月の県議会議員選挙では56.51%で、前回比2.48ポイントのマイナスとなり、いずれも前回を下回る結果となりました。

 その中で年代別の投票率を見ますと、20歳代で昨年12月の衆議院選挙が36.97%、4月の県議会議員選挙が31.23%と低調に推移しておりまして、今後は特に若年層への選挙啓発について配慮する必要があるということで考えております。

 若年層の低い投票率を改善する方策についての1点目、期日前投票所についての御質問でありますが、現在、鶴岡市の期日前投票所は、本所、地域庁舎に各1カ所ずつの計6カ所、そのほか投票所まで遠距離に当たる地域に期日限定ではありますが、温海地域に5カ所、櫛引地域に2カ所設置しており、合計13カ所の期日前投票所を設置しております。

 期日前投票所を高校、大学、商業施設、駅などに設置する場合には、二重投票防止のために市役所のシステムから開設する施設までのネットワーク専用回線の設置や受付用機材等の環境整備が必要であります。また、選挙時に投票所として優先的に使用できる十分なスペースの確保、投票の秘密等の確保、期日前投票所を運営する管理者、立会人、事務従事者の確保が必要となります。

 総務省では全国的に投票率の低下傾向が続く中で、各分野の有識者や選挙管理委員会の実務者による投票環境の向上方策等に関する研究会を設置して、実効ある方策の検討を進めております。それで平成27年3月に出された中間報告においても、期日前投票所の商業施設等への設置についてということも検討項目の一つとして議論されているところであります。

 そのようなことで、期日前投票所の増設につきましては、研究会での検討の推移や他の自治体の取り組みなども参考に状況を見きわめさせていただきたいということで考えております。

 2点目の投票済み証を持参した人に特典を用意してはどうかという御質問でありますが、選挙は個人の自由な意思によって公正になされるべきものであり、投票しなかったからといって不利益が生じることがあってはならないものと考えております。

 また、選挙における原則がございますが、その一つの投票の秘密ということにも広い意味で触れることにもなるものと考えております。

 さらに、投票と引きかえに特典を与えるということになりますと、一部の事業者の営利活動にも利用されるおそれがあります。

 選挙権年齢が満18歳以上に改められたことにより、今後、若年層に対していかに政治や選挙に関心を持たせるか、改めて重要な課題になっていくものと考えておりますので、他市の取り組みなどをも参考にしながら、若年層の政治参加意識を促進する取り組みの一層の充実、周知啓発について、県や教育委員会と協力を図りながら効果的な啓発活動を推進してまいりたいと考えております。以上であります。

◎教育長(難波信昭) 私からは、小・中学生の政治参画意識を育む取り組みについてお答えいたします。

 今回の公職選挙法の一部改正を機に、主権者教育がさらに大きく取り上げられ、学校教育で政治を身近なものとして学ぶ機会がふえていくとともに、それがひいては若い世代の投票率の向上につながっていくことになると考えております。

 主権者教育の理念として、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うことが掲げられており、学校では道徳や学級活動、児童会・生徒会活動、学校行事等においてその取り組みが行われている現状にあります。

 また、社会科では国際社会に生きる平和で民主的な国家、社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養うことを目標として、小学6年生では国会の働きの学習を、また中学3年生では民主主義と日本の政治、地方自治と住民参加の学習で、選挙の仕組みと意義、選挙権を含む、住民が持つさまざまな権利と自治意識を高めることの大切さなどを学んでおります。

 そのほかにも、本市の小・中学校では、議員からもありましたが、鶴岡市議会の傍聴、生徒会役員選挙、また明るい選挙啓発ポスターコンクールへの応募など、政治に触れ、政治を身近に感じる取り組みがなされておるところでございます。

 議員御提案の、小・中学校において本物の投票箱や記載台を生徒会役員選挙や模擬選挙に活用することにつきましては、政治や選挙への関心を高めるよい機会になると考えますので、選挙管理委員会と連携・相談しながら、その活用について働きかけていきたいものだなと考えております。

 次に、議場で子供議会を開催してはとの御提案でございますが、子供議会は議会や行政の仕組みを体験を通して理解させるとともに、市民としての意識を高める狙いがあることは十分承知しておりますが、主権者教育の狙いが一部の児童・生徒だけではなく、児童・生徒全員の参画意識を高めることを第一義としているため、子供議会の開催は考えておらないところでございます。

 また、リーダー研修会の機会に議場を用いて行ってみてはという御提案に関してですが、本市においては、小学校では中学校区ごとにリーダー交流会を、中学校では全11校の生徒会役員が参加してのリーダー研修会を開催しております。その狙いは各学校の代表児童・生徒が交流研修を通してリーダーの資質を高めるとともに、学校間や児童・生徒間の交流を深めることになっております。現在の形でもその狙いは十分に達成しているものと考え、議場を使ってのリーダー研修会の開催は、現在のところは考えておらないところでございます。まずは、鶴岡市議会の傍聴や見学等、小・中学生が政治に触れる機会をつくるように働きかけてまいりたいと存じます。

 いずれにしましても、教育委員会といたしましては、政治や選挙への関心を高める機会として、県や市の選挙管理委員会と連携を図りながら、小・中学生が将来の有権者としての意識を高める主権者教育を、学習指導要領の内容に沿って社会科や特別活動などを中心に学校教育で適切に取り組まれるよう指導してまいりたいと存じます。以上でございます。

◆7番(田中宏議員) ありがとうございます。

 結局、今までの取り組みがうまくいっていないから、今低投票率なわけですので、やはりこれまでどおりのものをこれまでどおりやっているだけではだめだということを、まず申し上げておきたいと思います。

 それで、今、文科省や総務省で研究している研究会の報告を読みますと、やはり投票に行くかどうかという前に政治的リテラシーの醸成というのが大事だと。それはどういうことかというと、今問題になっている現実の問題を生徒たちが我がこととして捉えることだということですので、全国の多くの町で、例えば市町村合併のような、自分たちの話題を高校で取り上げてみるとか、さまざまな取り組みが中学校で取り上げるとか、いろんなことがあるそうでございます。

 ぜひ、そのあたり御研究いただいて、何しろ来年の参院選、待ったなしでございますし、これから18歳、何しろ鶴岡だけで2,500人も新しい有権者が生まれるということで、住民票を鶴岡に置いたまま他所の大学に進学している不在者投票の問題などもありますけれども、ぜひ御研究いただきたいと思います。

2. 鶴岡シルクタウンプロジェクトについて

 さて、大きな2点目、鶴岡シルクタウンプロジェクトについてお尋ねします。

 3つに分けて、文化面について。

 養蚕体験とシルクガールズ。とても子供たちへの文化伝承として、やはり養蚕、じかに生きている蚕に触れるという、その成長を見るというすばらしい取り組みだと思っております。それから、シルクガールズのファッションショーなどについても一生忘れがたい思い出だということで、鶴岡という場所がほかの場所とはどことも似ていない、地元への愛着ある場所になるということで、とても高く評価しておりますけれども、その養蚕体験とシルクガールズの成果と今後の見通しについてお尋ねします。

 それからシルクサミット、平成14年から隔年で4回開催されましたけれども、あの学びがあったからこそ、今シルクタウンプロジェクトというのは成立しているというふうに私は思っております。そして、そのシルクタウンプロジェクトの実践があればこそ、あの学びの場であったシルクサミットというのは、今、真価が発揮されるときではないかと。あのときはやはり実践がこれからだったもんですから、これを組み合わせていくことで初めて今からシルクタウンが始まるんだという気がしております。ぜひ市民啓発の意味も込めて、シルクサミットの復活を求めたいと思いますが、お考えはいかがでしょうか。

 そして2つ目、産業面でございます。

 鶴岡のシルク産業の特徴は、何といっても全国で唯一、鶴岡にだけ養蚕から製品化まで一貫工程が残っている。それがブランド価値だというふうに思います。その価値を維持するために、例えば桑が不足しているだとか、養蚕家が減少しているだとか、さまざまな問題があるかと思いますが、その全国唯一の価値である一貫工程を維持するための取り組みとしてはいかがでしょうか。

 そのシルクタウンプロジェクトの5年間の中で、成長や衰退、変化、さまざまあったろうと思いますので、そのあたりお聞かせください。

 そして3点目、観光面でございます。

 シルクタウンを観光の目玉の一つとして育てられないかと。

 やはり加茂水族館、出羽三山、とてもすばらしい観光資源がありますけれども、リピーターの方、より深い鶴岡を知りたい方のために、そのシルクタウン、体験型の体験メニュー、それから土産物の開発ですとか、あるいは観光ガイドの人材育成など、じっくり取り組むお考えはいかがでしょうか。

 そして松ヶ岡の問題でございます。

 松ヶ岡は、シルクタウン鶴岡のルーツとなっただけではなくて、その後、山居倉庫ですとかさまざまな庄内全体の経済発展の産業発展の礎となった場所でございます。貴重な蚕室群の保存や活用も含めまして、言い方をかえますとエコミュージアムというような生きた博物館のような可能性がすごく大きい場所だと感じております。

 当局としての松ヶ岡の今後の発展、振興についての見解をお聞かせください。

◎企画部長(川畑仁) それでは、鶴岡シルクタウンプロジェクトについてお答えいたします。

 このプロジェクトは、本市の養蚕、絹織産業の伝統を保存・伝承するとともに、新たな可能性を開きつつ、地域を活性化することを目指す事業であります。

 平成21年からこのプロジェクトに着手し、平成24年度には新たな指針となる鶴岡シルクタウン推進プランを策定し、事業の推進を図っているものであり、全国で唯一残っている絹織りの一貫生産工程の価値を生かしながら、養蚕、絹織りの伝統を文化面と産業面それぞれの観点から振興策を展開する方針のもと、事業を実施しております。

 文化面における事業につきましては、絹織りの歴史文化を次世代に伝えるための普及策として、幼稚園、保育園、小・中学校及び福祉施設などに蚕の飼育キットを配付しまして、飼育体験を行う事業を実施しております。6年目を迎えました今年度は48の施設、約1,000名の幼児・児童・生徒が飼育体験を行っております。

 また、鶴岡中央高校の総合学科被服系の生徒で結成しているシルクガールズのプロジェクトは、平成22年から活動いただいておりますが、鶴岡の絹を学ぶことにより地域を元気にする活動ができないかという生徒の熱い思いで行われており、みずからが企画・運営し、鶴岡シルクや飼育体験で集めた繭から糸を取り、それらを織ってつくられた純鶴岡産の絹素材でのファッションショーを毎年開催し、好評を博しております。

 また、25年度からは飼育体験をしていただいている子供たちや高齢者施設、障害者施設の方々からもモデルとなっていただき、年齢や障害など、分け隔てなくファッションを楽しんでもらおうというコンセプトでコラボレーションなども実施しております。

 昨年度は、JR東日本のフリーペーパーである「トランヴェール」ですとか、TBSの「Nスタ」などの取材も受けまして、紙面やテレビにおいて鶴岡のシルクを情報発信していただきましたし、取材を行った報道関係者も元気な生徒や子供たちの姿に感動していたということでございます。

 それから続きまして、シルクサミットについてお答えいたします。

 シルクサミットにつきましては、平成14年度から20年度までに隔年で4回開催いたしております。主に地元シルクの関係者によって構成される実行委員会が中心となり、全国の第一線の研究者やデザイナー、企業人が文化、歴史、デザインなど、さまざまな分野からシルクに対して多面的にアプローチする手法で実施してまいりました。

 そのため、市民の学習機会にとどまらず、実行委員会に参加した企業間の連携強化、またサミットに招聘した研究者やデザイナー等と地元シルク産業関係者とのネットワークづくりにも大いに貢献してまいりました。

 また、地元シルク産業の従事者の方々が、みずからの仕事について、改めてその価値を見出し、地場産業を維持していくためのモチベーションの向上にもつながりましたし、鶴岡織物工業協同組合による「キビソプロジェクト」の展開にもつながったものと考えております。

 シルクサミットの開催につきましては、テーマに沿った形で、今年度新たにシンポジウムというイベントにかえての開催を検討しており、11月には鶴岡シルクの世界発信をテーマとするシンポジウムの開催を予定し、現在、準備を進めているところであります。

 続きまして、質問は最後でしたが、松ヶ岡史跡について、私どものほうの担当ですので、続けてお答えいたします。

 松ヶ岡開墾場は、明治初期の雰囲気を今に伝える貴重な史跡でありまして、平成元年に国指定史跡に指定されております。

 また、松ヶ岡地域は開墾という歴史的経緯を背景とした住民自治の伝統が残されている地域であり、地域住民による総出作業を初めとした組織的な地域活動が今でも行われております。

 市は、この松ヶ岡開墾場史跡が旧庄内藩主の開墾創業の精神を今に大切に受け継いでいること、また絹織産業の発祥の地であることから、シルクタウンプロジェクトでの一環として松ヶ岡地域を主体としたソフト事業を展開するとともに、歴史的風致維持向上計画の重点区域に位置づけ、新たな観光拠点としての再整備計画を検討しております。

 この計画に当たっては、まず歴史遺産として松ヶ岡史跡をしっかり保存・継承していくこと、これに重点を置きつつ、さらに新たな観光拠点としての魅力向上を図るためには、市としては史跡内において持続性ある魅力的な事業が地元組織を中心として展開されることが望ましいと考えてきたところであり、地元と話し合いを続けた結果、平成25年度には松ヶ岡地域振興ビジョン、松ヶ岡開墾場史跡パーク、仮称ですけれども、この構想がまとめられたところでありまして、このビジョンは史跡松ヶ岡開墾場を中心に松ヶ岡地域全域をそのエリアとして考え、歴史や精神性、教学の精神などの学び、芸術性、自然景観などを生かして事業を展開するという史跡活用の基本方向について総論的にまとめたものであります。

 市としては、民間所有による史跡の保存・維持に限界が生じつつある現状も踏まえ、本市の貴重な歴史遺産である松ヶ岡史跡を後世に保存・伝承するとともに、本市の新たな観光拠点として再興するためには、市による財産取得と地元組織への指定管理による運営、維持管理に移行する必要があるとも考えております。

 このため、文化庁の担当者や有識者で構成する松ヶ岡開墾場保存活用計画策定委員会と地元の意向を反映するための歴史的建造物活用懇談会を組織しながら、新たな松ヶ岡開墾場保存活用計画の策定を現在進めているところであります。

 また、議員のお話にありましたエコミュージアムにつきましては、こういった私どものほうの史跡パーク構想などとも理念としては同様の方向のものではなかろうかと考えております。

 いずれにしましても、今後とも地元組織と十分に話し合いを重ねながら、歴史遺産としてしっかり保存しつつ、地域の活性化にもつながるような事業を目指して進めてまいりたいというふうに存じます。以上です。

◎商工観光部長(小野寺雄次) それでは、私のほうから産業面及び観光振興策の御質問についてお答えいたします。

 初めに、シルク産業につきまして、商品の開発、市場の開拓といった面から、5年間の取り組みの経過などについてお答えいたします。

 鶴岡市のシルク産業については、本市のシルク産業を担う4企業が加盟する鶴岡織物工業協同組合が中心となり取り組みを進めてまいりました。

 まず商品の開発については、平成19年にファッションクリエーターである岡田茂樹氏やテキスタイルデザイナー須藤玲子氏の支援を受け、kibiso(キビソ)を商標登録し、新たなブランドとしてキビソプロジェクトをスタートさせております。

 一貫工程が域内に残る全国でも希有な地域、そして絹産地の北限であるといったストーリーと、キビソの魅力が評価されまして、平成20年2月には国の地域資源活用事業の指定を受け、これまでキビソの風合いを生かせるストールやバッグ、帽子といった商品を中心としたさまざまなニーズに応えられる商品開発を行ってきたほか、希少価値のきびその原糸を有効に使うため、ウールなどとまぜ合わせた混紡糸を開発するなど、より商品の幅を広げる努力を行っているところであります。

 次に、市場の開拓という点で申し上げますと、平成22年12月にシルク商品を販売する会社、鶴岡シルク株式会社を設立し、ブランドの定着や販路の拡大を進めてきたところであります。

 専門家のアドバイスを受けながら、昨年1年間で全国の大手百貨店など18会場、175日間にわたり出展し、売り上げも徐々に伸び、キビソブランドも首都圏を中心に認知されるようになってきたところであります。

 中でも昨年5月に東京の銀座松屋で1カ月にわたり開催された「鶴岡のきびそ・侍絹展」は、期間中、約2万人が来場し、鶴岡の絹産業の歴史とキビソ商品の質の高さを評価していただいております。

 鶴岡市内におきましても、平成22年6月に松ヶ岡にアンテナショップを常設したのを皮切りに、お土産品店や重立った旅館、まちキネなどで販売を行っております。

 以上のように、着実に取り組みを進めているところでございますが、シルク産業の自立化と産業化には一層の売り上げの拡大、安定と顧客の確保が課題となっていると認識しております。

 引き続き専門家や関係者に御協力いただきながら、より魅力的な商品開発や戦略的な販路拡大などの取り組みを後押ししてまいりたいと存じます。

 次に、一貫工程の価値を維持するための取り組みについてお答えいたします。

 鶴岡市のシルク産業は、明治初期の松ヶ岡開墾に始まり、洋装用の薄い羽二重生産で発展を遂げ、ピーク時である明治・大正期には、鶴岡の就業人口の半数が絹産業に従事するほどの一大産業となりました。

 しかし、時代の趨勢で海外製品や合成繊維に押され、国内の絹産地は次々と姿を消し、議員御案内のとおり、一貫した工程が残されている産地はここ庄内のみとなっております。

 養蚕農家が減少する中で、生糸の原料となる国産の繭を確保することは大変困難となっており、本市のみならず、全国の絹産地にとって原料確保するための養蚕の衰退に歯どめをかけることは喫緊の課題であると認識いたしております。

 まずは、先ほど申し上げましたようなキビソ製品を中心とした、鶴岡シルクならではの付加価値の高い唯一無二の製品づくりを進め、販路を拡大して売り上げを確保することが原料の価格安定につながり、養蚕業の復活に寄与すると考えております。

 また、一産地だけでの取り組みには限界があることから、県内外の産地とこれまで以上に連携しながら魅力ある商品開発等のコラボレーション事業を推進し、国内外を視野に入れた販路の拡大を図ってまいります。

 昨年6月に群馬県富岡製糸場の世界遺産登録を機に、日本のシルク産業、シルク産地が再び注目をされるようになりました。

 鶴岡シルクもこれを好機と捉え、海外を視野に入れた販路の拡大を模索しているところであり、本年10月にミラノ国際博覧会に出展予定の鶴岡の食文化とともに、本市の伝統産業をPRするため、キビソ製品等を出展する予定であります。

 イタリアは最新ファッションの発祥地であることから、キビソ製品に対する海外の反応を現地調査するとともに、将来に向けた海外出展の可能性について探ってまいりたいと考えております。

 以上申し上げましたように、本市の絹産業については、全ての工程が残る希有の地域であるという地域資源を最大限に生かしながら、付加価値の高い商品開発と市場開拓を行うことで養蚕業の復活を図り、伝統と文化を後世につないでいくことが重要であると考えております。

 鶴岡織物工業協同組合関係者はもとより、シルクタウンプロジェクトによる市民活動と一体となった取り組みによりシルク産業の振興をこれまで以上に推進してまいります。以上でございます。

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